引越し直後は、段ボールを開けながら防災セットまで完璧にそろえようとして疲れがちです。最初の夜に必要なのは、避難先と、3日分から始める基本物資です。
先に結論:避難先、3日分、個別条件の順
| 自分の状況 | 最初にすること | 次の目安 |
|---|---|---|
| 引越したばかり | 住所のハザードマップと災害別避難先を確認 | 玄関・寝場所・通路を空ける |
| 一般的な成人の基本備蓄 | 水、調理不要の食品、携帯トイレを3日分から | できれば1週間に増やす |
| 服薬・食事・移動に個別条件がある | 一般セットを先に買わず相談 | 医師・薬剤師・自治体と持出し方法を決める |
第一候補は、今夜の避難先を確認し、普段飲む水と食べる物を3日分に近づけることです。内閣府は最低3日間、できれば1週間の備蓄を案内しています。
防災準備は、旅行の荷造りに似ています。行き先を決めてから荷物を詰めるように、避難行動を確認してから必要物を決める順です。ただし、災害時は予定どおり動けるとは限らないため、公的な最新情報と目の前の安全を優先します。
1. 新住所で起こり得る災害と行動を確認する
国土地理院のハザードマップポータルと、新住所の自治体公式サイトを見比べます。ポータルに色がないことだけで危険がないとは判断せず、掲載する災害、想定条件、作成・更新時点も確認してください。
次の表を災害種別ごとに埋めます。
| 項目 | 記録する内容 |
|---|---|
| 対象災害 | 洪水・内水・高潮・土砂災害・津波・地震・火災等のうち住所に関係するもの |
| 公式情報 | 自治体の地図・防災ページ、通知アプリ・メール、防災行政無線等 |
| 自宅の条件 | 階、想定浸水深・継続時間、土砂・津波等の区域、建物の説明 |
| 予定する行動 | 立退き避難、屋内安全確保等について自治体案内と住戸条件から確認した内容 |
| 行き先 | 今回の災害に対応する指定緊急避難場所、安全を確認した自主避難先等 |
| 移動 | 出入口、利用できる経路、所要時間、支援が必要な場合の連絡先 |
| 判断のきっかけ | 自治体の避難情報、気象・河川等の公的情報、本人の個別避難計画 |
指定緊急避難場所は災害の危険から命を守るための場所で、災害種別ごとに指定されます。指定避難所は危険がなくなるまで等の期間を過ごす施設です。同じ建物が両方を兼ねる場合もありますが、「最寄りの学校へ行く」と固定しないでください。
屋内安全確保も、どの住戸・災害でも選べる方法ではありません。内閣府の避難情報ガイドラインは、ハザードマップ、家屋倒壊等氾濫想定区域、浸水深・継続時間、建物内で安全を確保できるか、孤立時の水・食料・薬・電気・水道・トイレ等を確認する考え方を示しています。災害時は、平時に作った表だけでなく、その時点の自治体等の情報と現地の危険を優先します。
2. 出口・寝場所・家具を確認する
引越し直後は、備蓄の収納より先に、玄関等の出口と寝場所を確保します。
- 段ボール、家具、家電が扉の開閉や通路を妨げていないか
- 就寝位置へ倒れる、移動する、落下する物がないか
- 窓・鏡・食器等が割れた場合の影響と、足元を照らす手段
- 建物の非常口、火災時の連絡先、停電時のオートロック・エレベーター等の案内
- 家具・家電の転倒防止と、扉・引き出し・収納物の飛び出し防止
消防庁は、家具の転倒がけがや避難経路の閉塞につながると案内し、L型金具等の固定例を示す一方、壁と家具の種類に合う方法を選ぶよう求めています。最初に、背の高い家具を寝室・出入口付近に置かない、就寝位置を家具から離す等の配置を確認し、その後に固定方法を選びます。
ねじ、接着、突っ張り等は、器具だけでなく壁・天井・下地・家具の強度と取扱説明書を確認します。賃貸住宅で穴あけや造作変更等を伴う場合は、手元の契約と管理会社等の承諾条件を確認してください。判断や施工が難しい場合は、自己流で取り付けず、管理側・メーカー・専門業者に相談します。
3. 在宅備蓄・非常持出品・普段の携帯品を分ける
3日分や1週間分の全量を持ち出し袋に入れるわけではありません。避難行動と本人が安全に持てる量から、次の3区分を決めます。
| 区分 | 目的 | 判断すること |
|---|---|---|
| 在宅備蓄 | 安全を確認した住戸等でライフライン停止に備える | 人数・日数、保管環境、停電・断水、取り出し、浸水・転倒・火気の影響 |
| 非常持出品 | 危険な場所から離れるときに携行する | 避難先・経路、必要な物、重さ、両手を使えるか、本人が持てるか |
| 普段の携帯品 | 外出先で情報・連絡・健康管理に使う | 連絡先、服薬情報、通信・充電、本人確認等のうち本人に必要なもの |
持出品は既製セットの点数ではなく、避難時に必要で実際に持てるものに絞ります。リュック等に入れたら、玄関を開け、階段等を通って安全に移動できる重さか平時に確かめます。自宅へ戻れる前提で必要品を外すことも、すべてを一袋に詰めることも避けてください。
在宅備蓄の置き場所も、「重い物はすべて低い場所」「玄関にまとめる」と一律には決めません。転倒・落下を防ぐ安定性、浸水想定、火気、温度・湿度、扉・通路、取り出しやすさ、容器の保管条件を見比べ、必要なら複数箇所に分けます。
4. 公的目安から本人の数量を計算する
内閣府は家庭備蓄について、最低3日間、できれば1週間過ごせるようにし、飲料水は1人1日3Lを目安として示しています。経済産業省は災害時用トイレについて、平均1人1日5回、7日分35回を備蓄例としています。
これは、次の計算を始めるための公的な目安です。
| 対象 | 出発点 | 追加で確認すること |
|---|---|---|
| 飲料水 | 3L × 人数 × 想定日数 | 医療上の水分制限、暑さ、持出し分、商品表示、飲料以外に必要な水 |
| 食料 | 最低3日、できれば1週間という期間 | 実際の食事回数、食事制限・アレルギー、調理・加水・開封、乳幼児・高齢者等 |
| 災害時用トイレ | 5回 × 人数 × 想定日数 | 本人の回数、製品1セットの使用回数、袋・凝固剤等、保管・使用・廃棄方法 |
飲料水1日3Lの目安を、調理・手洗い・清掃等の水まで含む量とは扱いません。備蓄する食品が加水・加熱を必要とするか、建物で生活用水を確保できるかを別に確認します。
3日分を置いたことも、1週間分に増やしたことも、どの災害でも十分という保証ではありません。自治体や建物の計画、孤立可能性、物流、本人の医療・介助条件が異なる場合は、その案内と個別条件を優先します。場所や費用の制約で一度に用意できない場合は、不足項目と次に補う日を記録し、完了扱いにしません。
5. 品名ではなく生活機能から中身を決める
固定の「防災セット」を写すのではなく、停止すると困る機能から候補を作ります。
| 機能 | 確認すること |
|---|---|
| 飲む・食べる | 飲料、開封方法、加熱・加水なしで食べられる物、普段食べられる物、食事制限 |
| 排泄・衛生 | 災害時用トイレ、紙・衛生用品、本人の介助・生理・乳幼児等の条件 |
| 明かり・情報 | 手持ち機器、電源方式、対応する電池、ラジオ・公的情報の受信方法 |
| 連絡・充電 | 端末、ケーブル、充電器、モバイルバッテリー、連絡先の紙・電子控え |
| 温度・睡眠 | 季節、停電、衣類・寝具、避難先、本人の健康状態 |
| 医療・服薬 | 常用薬、薬名・用量・アレルギー、医療機器、保管温度、医療機関・薬局 |
| 移動・安全 | 靴・足元保護、視力・聴力・歩行等の補助、鍵、本人確認、持てる重さ |
| 本人固有 | 妊娠、乳幼児、高齢、障害、ペット、言語・意思疎通等で必要なもの |
食料は停電時に冷蔵・冷凍できない場合も想定し、少なくとも一部は火や水を使わず食べられる物にします。普段の食品を多めに持ち、使った分を補うローリングストックを使う場合も、期限、保存条件、減った数量を記録します。停電時の食品の扱いは冷凍ストックで分けて確認してください。
常用薬・医療情報
常用薬を自己判断で多く受け取ったり、服用間隔を変えたりしません。薬の種類、保管温度、中断時の対応、災害時の受診・受取方法を、平時に医師・薬剤師に相談します。
次の情報は、本人が見られ、必要時に医療者に伝えられる形で用意します。
- 薬名、用量、服用時刻、処方した医療機関・調剤した薬局
- 持病、アレルギー、副作用歴、医療機器・保管条件
- 紙のお薬手帳、電子版お薬手帳、マイナポータル等のうち利用できるもの
- 電源・通信・端末故障時にも確認できる控えと、更新日
厚生労働省は、電子処方せんに対応する医療機関・薬局では、本人の同意のもと災害時にも薬剤情報を確認できる仕組みを案内しています。ただし、すべての情報・施設・通信環境で同じように使えるとは限らないため、一つの手段だけに依存しません。
6. 防災用品は型番・構成・安全条件を確認する
既製の防災セットに「1人用」「36点」等と書かれていても、本人に必要な機能、数量、期限、型番、安全条件がそろうとは限りません。購入済みのセットも開封し、各品を台帳に移します。
災害時用トイレ
- 携帯トイレ・簡易トイレ等のどの方式か
- 1箱で使用可能な回数と、便袋・凝固剤・処理袋等の構成
- 自宅の便器等で使えるか、使用前後の手順、衛生上の注意
- 使用済み品を一時保管する方法と、自治体・建物の廃棄案内
断水だけでなく排水設備の損傷もあり得るため、通常の水洗を続けられるかは建物・自治体の案内を確認します。
カセットこんろ・ボンベ
NITEは、カセットこんろを2台以上並べること、大きな調理器具で熱をこもらせること、ボンベを正しく装着しないことによる事故に注意を促しています。次を型番別の取扱説明書で確認します。
- 本体と使用できるボンベ、装着方法、使用・換気条件
- 鍋等の大きさ、周囲との距離、禁止される使い方
- ボンベと本体の表示・期限、さび・変形等の異常、保管・廃棄方法
安全に使える場所や燃料が確保できると確認する前から、加熱が必要な食品だけで備蓄を組みません。
モバイルバッテリー・電池・照明
必要な容量や電池数は、端末、使う機能、通信状況、気温等で変わります。容量表示だけで充電回数を保証せず、実際の端末・ケーブルで動作を確認します。
NITEはモバイルバッテリーへの衝撃や端子の水分等に注意を促しています。膨張、変形、異臭、異常な発熱、破損等がある物は使用を続けず、メーカー案内に従います。製品名・型番を記録し、取扱説明書と消費者庁のリコール情報も確認してください。
7. 公的情報と安否確認を一つに依存しない
災害前に、次を本人の連絡表に記録します。
- 自治体の避難情報を受け取る方法と、登録・通知テストの結果
- 気象・河川等の公的情報を確認する方法
- 家族・友人・学校・勤務先等のうち、本人が連絡する相手と優先順
- 電話がつながらないときの171、web171、通信事業者の災害用伝言板等
- 充電できない場合に備えた紙の連絡先と、集合・再連絡の方法
災害用伝言ダイヤル171は、災害で被災地への通話が増え、つながりにくい状況になった場合に提供される音声伝言板です。常時利用できるとは限らず、提供開始、登録できる電話番号、保存期間、蓄積数等は状況に応じて設定されます。
登録のキーにする電話番号は家族・友人等と事前に共有し、固定電話番号は市外局番から入力します。実際の提供条件と登録対象はNTTの最新案内で確認し、体験利用できる日に録音・再生を試します。171だけを唯一の連絡方法にはしません。
8. 日付ではなく変化をきっかけに見直す
「毎月1日」等の固定日だけでは、必要な更新を拾えません。次の変化があったときに台帳を見直します。
- 転居、同居人数、避難先、学校・勤務先、連絡相手が変わった
- 自治体のハザードマップ、指定場所、避難情報・通知方法が更新された
- 家具配置、建物設備、管理会社の案内が変わった
- 持病、服薬、食事、妊娠、介助、ペット等の条件が変わった
- 食品・水・衛生用品を使った、期限が近づいた、保管状態が変わった
- 電池・充電器・照明等の動作不良、破損、異常、リコールを確認した
- 訓練や実際の移動で、重さ・経路・連絡方法に問題が分かった
更新時は、数量だけでなく、公式情報の確認日、製品の型番、保管場所、動作確認の結果、相談先の回答を残します。
コピーして使う最終チェック
住所・避難
- 自治体公式の住所別ハザードマップと更新時点を確認した
- 災害種別ごとに、予定する行動・行き先・経路・情報源を記録した
- 指定緊急避難場所と指定避難所の役割を分けて確認した
- 自治体等の避難情報を受け取れるか確認した
住戸・家具
- 玄関等の出口と寝場所を段ボール・家具・落下物から空けた
- 家具・家電の配置、固定、扉・収納物の飛び出しを確認した
- 固定器具の型番・取付条件と、賃貸借契約・管理側の条件を確認した
- 停電・断水時の建物設備と連絡先を確認した
物資・健康
- 人数と想定日数から飲料水・食料・災害時用トイレを計算した
- 食事制限、服薬、温度、介助等の本人条件を追加した
- 在宅備蓄・非常持出品・普段の携帯品を分けた
- 品名、数量、期限、保管場所、動作確認日を台帳に記録した
- カセットこんろ、充電器、電池等の説明書・異常・リコールを確認した
連絡・更新
- 171等で使う番号と別の連絡方法を相手と共有した
- 持出品を実際に持ち、出口・経路を安全に通れるか確認した
- 情報・住戸・健康・製品が変わったときの見直し担当を決めた
確認に使った一次・公式情報
- 内閣府「自然災害への備えは万全ですか?チェックしてみよう!」(住所別災害リスク、最低3日・できれば1週間、飲料水1人1日3L、ローリングストック)
- 内閣府「避難情報に関するガイドラインの改定(令和8年3月)」(災害別の立退き避難・屋内安全確保、最新の避難情報体系)
- 内閣府「避難場所に関すること」(指定緊急避難場所と指定避難所の役割)
- 国土地理院「ハザードマップポータルサイト」(住所・災害種別のリスク、自治体ハザードマップへの入口)
- 消防庁「非常持出品の準備」(持出品は本人によって異なること、持出し・服薬情報)
- 消防庁「家具の転倒を防止」(転倒・経路閉塞、壁・家具に合う固定方法)
- 消防庁「家具の配置を工夫する」(寝室・出入口・就寝位置・重量物の配置)
- 経済産業省「トイレ備蓄 忘れていませんか」(1人1日5回、7日分35回という備蓄例)
- NITE「携帯発電機・カセットこんろ・モバイルバッテリーの使用にご注意ください」(カセットこんろ、ボンベ、モバイルバッテリーの事故防止)
- NTT東日本「災害用伝言ダイヤル(171)概要とご提供のしくみ」(提供条件、登録番号、保存期間等)
- NTT東日本「災害用伝言ダイヤル(171)操作上の注意事項とお願い」(共有する番号、体験利用)
- 厚生労働省「電子処方せん(国民向け)」(災害時を含む薬剤情報の確認と共有条件)
- 国土交通省「賃貸住宅標準契約書」(賃貸住宅の契約条件を確認するためのモデル)
- 消費者庁「リコール情報サイト」(製品名・型番によるリコール確認)
「引越し直後 防災 備え」の確認から次へ進むときは、一人暮らしの始め方|入居日から逆算する準備の全体像、一人暮らしが不安なとき|契約前後の確認項目と相談先も同じメモから開けます。
まとめ
最初は新住所の避難先を保存し、玄関と寝場所を空けます。次に水・調理不要の食品・携帯トイレを3日分から始め、できれば1週間に増やします。服薬や食事制限は一般セットで代用せず、平時に個別相談してください。
今日は水一本と食べ慣れた食品一食分を置き、自治体の防災情報を受け取れる状態にすれば一歩進みます。差し迫った危険では、物より身の安全を優先してください。
よくある質問
引越し直後の防災で最初にすることは?
最初に、新住所の自治体公式ハザードマップ、災害別の指定緊急避難場所、避難情報の受け取り方を確認します。次に、玄関等の出口と寝場所が家具・段ボール・落下物で危険になっていないかを見ます。固定の商品一覧を買うのは、その後です。
一人暮らしの水と食料は何日分必要?
内閣府は、各家庭で最低3日間、できれば1週間過ごせる備蓄と、飲料水1人1日3Lを目安として示しています。これは一律の完了量ではありません。人数と想定日数で計算し、調理・衛生に使う水、食事制限、暑さ、地域・建物の孤立可能性等を別に確認してください。
携帯トイレは15回分あれば足りる?
15回分を全員の完了量にはできません。経済産業省は平均使用回数を1人1日5回とし、7日分35回を備蓄例として示しています。人数、想定日数、本人の利用回数、製品1セットの使用可能回数、袋・凝固剤等の構成、保管・廃棄方法から必要数を決めます。
災害時は近くの学校へ避難すればよい?
学校等が、今回の災害に対応する指定緊急避難場所とは限りません。指定緊急避難場所は災害から命を守る場所、指定避難所は一定期間滞在する施設で、役割が異なります。災害種別、自治体の指定、現在の開設・避難情報、自宅と経路の安全を確認してください。
常用薬は何日分備蓄すればよい?
薬の種類、処方日数、保管条件、中断した場合の影響が異なるため、自己判断で共通日数を決めたり服用量を変えたりしません。平時に医師・薬剤師へ災害時の持出し・保管・受診方法を相談し、薬名、用量、アレルギー、医療機関・薬局を確認できる情報も準備します。
賃貸住宅の家具は突っ張り棒だけで固定できる?
器具名だけでは判断できません。消防庁は壁・家具の種類に合う方法を選ぶよう案内しています。まず寝場所と出口をふさがない配置にし、家具、壁・天井、下地、器具の取扱説明書を確認します。ねじ穴等を伴う場合は賃貸借契約と管理会社等の承諾条件も確認してください。






